食事と言う生活について

〜まずT食品の機能Uを知った上でT食事の効用Uが生まれます〜

よく医療機関などに通院していると、安心してしまって何もしない人が多いようです。
病の基本は洋の東西に関わらず専門家の治療を受け、そして自分でも養生をする事です。
病気ではないものの、体調が良くないときは自分自身で養生をしなければなりません。
とくに食べ物による食養生は、普段から体調を崩さず健康で過ごせるために大切な方法です。

世の中に氾濫している養生法の大部分が食べ物によるものです。別に健康法とも言われますが意味は同じだと思います。多種多様な方法がありますが、まずは伝統食を再認識してください。

乳製品や 油、肉を使った料理ではなく、
季節の野菜や魚介類を使って調理した和食を食べるよう に心掛けてください。
季節の野菜や魚介類がどれだか解らないという人もいますが簡単です。スーパーや八百屋、魚屋に行って一番値段の安いものがそれです。

いわゆる食事療法とは食品の持つ機能を言っています。一般的には食品中の有効成分を言っていますが、それでは薬と何ら変わりありません。それでしたら成分を抽出して服用した方が良さそうですが、そういうわけには行かないのが不思議なところです。

では食養生で言う食品の持つ機能とはどういうことかというと、季節に応じて人体を暖めたり冷ましたりすると言うことです。そうなると食材一つ一つの性質を知っていないと対応できない感じがしますが、実際にはその季節の旬の食べ物が自動的にやってくれます。しかし時々一人で食べていたのでは何の意味もありません。家族ぐるみという習慣にまで環境を整える事で、食事の効用を上げる事が出来ます。

しかし現代は、食べ物どころか生活環境そのものが、季節に殉じていません。

とくに夏場の冷房や冷たい食べ物が、冬場の下痢や春の花粉症の原因になります。つまり現代社会に応じた食養生の基本は身体を暖める物を,もしくは身体を冷やさない物をいかに摂取するかと言う事になります。

身体を暖めるもの,冷ますもの。

〜地中の物(根菜類)は身体を暖め,地上の物(葉や果物)は身体を冷やします〜

身体を冷やした,つまり身体の機能が低下したための症状はたくさん有ります。疲れや不眠、肩こり腰痛冷え症婦人病.....、恒常的にこんな症状を抱えている場合は、暖める作用のある食材が有用です。

簡単に言ってしまえば、
地中の物や冬が旬の物は暖める作用,地上の物や夏が旬の物は冷やす作用が有りま す。

地中や寒い時期,寒い所で採れた食べ物は身体を暖める作用があります。

よく山芋が精力増進に使われたり,葛の根が葛根湯として風邪のひき始めに使われるのはその為です。凝りや鈍痛,冷えなどの慢性疾患は身体の機能 が低下している時の症状です。
 
地上や暑い時期,暑い所で採れた食べ物は身体を冷やす作用があります。

発熱時に果物を食べたり,アトピー症の人に生野菜を食べる事を薦めるのはその為です。体力の 充実した若い人は,何を食べても健康でいられますが,病気や年齢的に体力の不安定な人は身体を暖める事を意識して下さい。

しかし世の中に氾濫した食材はそんなに単純ではありません。いくつかの検討をしてみました。

乳製品の存在理由

骨粗鬆症や若い人の骨のもろさが問題になっておりますが,カルシウム不足だけではなく日に当る時間が少なかったり,骨に負担のかからない生活習慣も考えられます。
なぜなら乳製品の無かった昔は問題にならかったからです。

乳製品は野菜の代用品

ヨーロッパは余り知られていませんが大変寒い所です。つまり農作物にはあまり恵まれてい ませんでした。雑草を食べる訳にもいかないので,その雑草を食べる牛の恩恵に与ろうとして,肉牛や牛乳を取る様になりました。本来ビタミンやミネラルは野菜から取るべきものですが,ヨーロッパで野菜を食べる様になってからは300年位しか経っていないそうです。そのため乳製品の食文化が発達しました。しかし日本は農作物の豊富な比較的暖かい国なので乳製品は必要とされませんでした。ところが戦後,欧米諸国への憧れとハイカラ趣味として乳製品や肉食を受け入れました。そのため体格こそ大きくなりましたが,体力低下や新しい病気を起こした要因の一つと言われております。よく“牛乳からカルシウムを”と,言われます。やはり小松菜や鴬菜など野菜から取る方が適切です。ところで乳製品は身体を冷やす物だと言われます。 大量の蛋白質が短期間に体内に入る為,吸収するのに体力を使うのです。身体が重 い,節々が痛い,何となくだるい等の時は1週間ほど乳製品の摂取を控えてみて下さい。体調の変化が期待できます。

味について

“甘い”という味の体調への影響〜旨味とは甘味がかすかに有る事で感じます〜

最近良く肩が凝る,体の節々が痛い,体が重い,お腹の調子が良く無い等の時は,しばらく甘いものを控えてみて下さい。体調の改善が期待できます。

ところで濃い味付けは悪いと言われますが、どの位の味から濃いのか。体に最も影響の出る“甘 い”と言う味は,御飯を良く噛むと次第に甘みが出ますが,実はあの味より強い甘さは毒だと言われてます。甘い食べ物の大部分は“砂糖”もしくは合成甘味料の“リン酸”で味を付けます。砂糖は炭水化物から抽出した物ですから,特定の穀類の一部分から砂糖が生れる訳です。つまり普通に穀類を食べていれば甘いものは身体にとって余分なものなのです。逆に過度の運動やダイエットで穀類の摂取が不足していると甘いものが欲しくなります。しかも抽出したものや合成したものは,砂糖でも油でも塩でもアルコールでも吸収しやすいので太り易くなるのです。そのうえ少しの刺激でも過度の反応が出る様になります。ちょっと引っ掻いても腫れやすい人や,身体の節々が痛い時や,ましてアトピー症の人は甘いものやアルコールを断つ事をおすすめします。しかし味付けはしょっぱい物の方が濃くなりがちですが,塩と砂糖は同じ調味料なのに実は全く違う物です。

塩について

ナトリウムの取り過ぎが問題 食塩(合成塩)に比べて,粗塩(自然塩)は少しの量でも味が強くなります。つまりその分量だけ塩を減らせる訳です。

“塩分1日10g以下を目標”よく聞く言葉ですが,実際に身体に影響を与えるのは塩分中のNa(ナトリウム)です。一般的に使われている食塩はサラサラしていますが,その成分の99%が合成して作られたNaCl(塩化ナトリウム)です。つまり半分がナトリウ ムなのです。

食塩に対して粗塩という物があります。

海水や岩塩の中の自然の塩分を 取り出したものです。その成分は自然に存在する塩化ナトリウムが7割くらいで、残りがミネラル分と微量の水分です。そのためサラサラしていません。しかし粗塩は食塩 に比べ少量で味が濃くなります。つまり同じ味でしたら粗塩の方が体内に入るナトリウムの量が少ないのです。薄味に慣れる事は辛い事ですが,粗塩に変える事で味付けを変えずにナトリウムの摂取量を減らせます。

ところで塩は食品ではありません。

砂糖は穀類から抽出するので食べ物ですが,塩はミネラルなので鉱物です。人体にとって砂糖は無くても構いませんが,微量の塩は生命にかかわる必需品です。上手に摂取 したい物です。

水について
〜水分は適量を〜

現代人は実は水分も取り過ぎています。東洋医学では昔から水分の取り過ぎと関節疾患の関係性について臨床経験的に指摘されています。冷えたりむくんだりするためで す。

良い水が簡単に手に入る様になりました。

上水道に含まれる消毒薬の匂いや味や人体に与える様々な影響のため“おいしい水”が流行っています。水の質については色々と語られておりますが,実は現代人の水分の取り過ぎについて,余り言われておりません。身体が重い,関節が痛い,だるい,冷える,むくむ等,水分の摂取を減らしただけで,ずいぶん改善していきます。トイレに行く回数を一日5〜6回を目安に水分の摂取コントロールをして下さい。水でも太ると言われますが,脂肪細胞は増えたり減ったりしませんので,細胞内に水分がたくさん入り込むから水でも太るのです。脂肪はカロリーだけではなく大切な水分も蓄えている訳です。

人の体を機械の様に考える栄養学

伝統食や世界の風土料理と栄養学との矛盾

現在でもエスキモーの人達は,ほとんど野菜を食べずに生活しています。それでも充分健康だからです。そしてその食事はバランスが取れているのです。肉を食べたら野菜も食べる事がバランスではありません。自分達が生れ育ち生活している風土から得られた物が,最も好ましい食事なのです。

人間の食べ物

動物には肉食獣と草食獣が居ます。では人間の分類はどうかと言うと,穀類を中心とした雑食性です。猫や犬,鼠そしてカラスなど人間の近くに居る生き物は大部分が雑食性です。猫や犬,カラスなどは肉食を中心とした雑食性ですが,鼠は人間に食べ物が近いため医学の向上として,実験動物に使われる事が多い様です。

三大栄養素と言う言葉があります。

蛋白質,脂肪,炭水化物(糖)がこれにあたります。この3大栄養素を体の中で効率良く使う為ビタミン,ミネラルが必要となります。特に人間が必要とする蛋白質を必須アミノ酸,脂肪を必須脂肪酸と言いそのほとんどが豆類や胡麻などに含まれていて,一部魚介類にも含まれています。
炭水化物は米や麦,芋類など全ての穀類に含ま れています。
炭水化物は体内でブドウ糖に分解され,筋肉の運動エネルギーや大脳中枢の栄養になります。こういった科学的な分類では肉は余り必要の無い物とされてい ます。

三大栄養素のほかにビタミン,ミネラル,繊維質を取るとか,バランスと癌予防のために一日30品目取る,肥満や成人病(生活習慣病)予防の為に油や糖分を控えてカロリーを制限する、これらの事をきちんと計側しながら毎日続けて行く事は大変困難な事です。

ところが世界に目を向けてみると,

乳製品や肉だけで昔から健康に生活している地域があります。“一物全体食”という考え方で,その地域で取れた物をなるべく丸ごと食べるという物です。

ここに風土料理と栄養学との矛盾があります。

肉を食べたから野菜を食べるというバランスではなく,アザラシを丸ごと一頭食べるというバランスなのです。日本でしたら白米より玄米,大根の葉や葱の青い部分も食べていました。又“母乳が出ない時は餅や鯉を食べろ”と言われ栄養学的ではありませんが経験的に正しいとされています。その地域のその風土によって生きて来たその民族専用の風習が有ります。

科学という枠には収まりきらない永い経験による英知。

合成ビタミンを薬で取ったり,無理なカロリー制限をするのではなく,本来のその民族のあり方にまで通ずる郷土の伝統食と昔ながらの知恵に、目を向けていきたいと思います。